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誰か世栄を薄くすと謂わんや

20230817

最近読んだものについて。

平野啓一郎『空白を満たしなさい』

 ドラマ性の高い作品で、ドラマ部分はとても面白いのだが、「分人」についての説明がクドすぎる。前半から「そういう人間ではない」とか、「分人」の前振りとなる語彙が出てきており、平野の考えについてはエッセイを読んだことがあるから知っていたため、その匂わせの時点で「来たなー」と思っていたのだが、それにしても中盤から後半にかけては胸焼けがしそうであった。

 作者が登場人物の口を借りて話している、という感じがどうしてもしてしまうのが欠点なのか、それともプラトン的な記述のあり方なのか。ただ、プラトンであるならばおそらく「分人」と対立する思想もでてきただろう。プラトンが説教くさくないのは、そこに由来するように思う。